DXが進みづらい組織。それは、わたしたちの暮らしに根付いた組織、例えば学校や病院など、個人情報を多く取り扱う組織であることがほとんどです。情報保護の観点から、オンラインツールの導入が憚られることはままあることです。
医療現場へのDXの浸透状況を確認できる例として、病床数規模別電子カルテの導入率を確認してみましょう。大規模な病院では導入が進みつつあるものの、依然として中小規模の病院ではまだ半数がカルテの電子化が進んでいないという現状が確認できます。
筆者も以前体調が悪くなり、急遽病院に行かなければならなくなった経験があります。その時、夜遅くまで営業している病院をなんとか見つけましたが、薬を処方してもらうために一から採血やプロフィール記入などをする必要があり、それらの手続きだけで30分以上も掛かってしまいました。もちろん、それらの処理が終わるのを待っている間も体調は刻一刻と悪くなる一方で、別日に行きつけの病院を予約すれば良かったな・・・と思うばかりでした。
行きつけの病院で登録されているはずの私の個人情報や採血情報が電子カルテで保存されていたのであれば、私の苦しんだあの1時間は発生しなくて済んだはずですし、何しろ他の病院が行った登録作業を別の病院も行うのは二度手間ではないでしょうか。
しかし一方で、「オンライン診察」や「オンラインピル処方」という文言を広告で目にする場面が増えてきたことも事実です。コロナ禍で病院への立ち入りが規制されたあのときをきっかけに、病院に行かずとも遠隔で診療してもらえるという体制が整ってきたのは素晴らしいDXといえるのではないでしょうか。(筆者もこれを利用すれば良かったかもしれません・・・)
出典:シード・プランニング社(2021/03/09)https://www.sbbit.jp/article/cont1/52798
セキュリティの脆弱性が叫ばれている昨今、いくらオンラインツールの導入ハードルが高いとはいえ、それが導入されることで救える命が1つでも多くあるのであれば、そちらを優先すべきは明白なはずです。だからこそ、暮らしに根づいたDXを提案する企業側にも、国民の安心と安全を守るための柔軟さと繊細さが求められていきます。